しろくろうさぎ と ひつじさん

むかしむかし あるところに

りんたろう という なまえの

ちょっと きどった ひつじさんが すんでいました。

ひつじさんは みためは わりと かっこいいのですが

とても めんどうくさがりなので

いつもは いちにちじゅう かわのほとりで ねむっています。

でも きょうは とても てんきがよかったので

もりに おさんぽに やってきました。

もりは おひさま ぽかぽか。

「あー なんだか ねむくなってくるなあ」

ひつじさんが つぶやいたときです。

「だれか たすけてーっ」

あたりに ひめいが こだましました。

ひつじさんが こえのするほうに いってみると

かわいらしい しろい うさぎさんが

ツタにからまって うごけなくなっていました。

からまっていた ツタを とってあげると

うさぎさんは ていねいに おじぎをしました。

「ありがとうございました」

「いや れいには およばないさ」

ひつじさんが かっこつけて たちさろうとすると

それを うさぎさんが ひきとめました。

「ちゃんと おれいを したいので

 ぜひ ぼくのいえに きてください!」

いえには くろい うさぎさんが いました。

しろい うさぎさんが いいます。

「ぼくたちは ふたごなんです」

くろい うさぎさんが いいます。

「ぼくは ふみ。

 こっちも ふみ なんだ」

しろい うさぎさんと くろい うさぎさん。

なまえは おなじで かおも こえも そっくりです。

ふたりの うさぎさんたちは 

ひつじさんを おおきなケーキで もてなしました。

「ああ うまかった」

あまいものが すきな ひつじさんは だいまんぞくです。

そこに くろい うさぎさんが あまえたこえで いいました。

「ねえ ひつじさん」

「なんだい?」

「よかったら ぼくたちも いっしょに たべない?」

うさぎさんたちは くちぐちに たずねます。

「ずっと ふたりだけで ねむるのが さみしかったんです。

 あさまで いっしょに いてくれませんか?」

「ひつじさん みためは ごうかくだけど

 ベッドでも ぼくを まんぞくさせて くれるよね?」

ひつじさんは とても おどろきましたが

うさぎさんたちが とても かわいいので

いっしょに たべてしまうことに しました。

ひつじさんと しろと くろの うさぎさんは

おおきな ベッドに さんにんで ねころびました。

「あれ みんないっしょに ねるつもり?」

ひつじさんが たずねると くろい うさぎさんが こたえます。

「うん だって ぼくたちはね」

しろい うさぎさんも こたえます。

「どちらかが きもちいいと もうかたほうも きもちよくなるんです」

ふたりの うさぎさんは にっこりと ほほえみました。

ひつじさんが こしを うごかすと

くろい うさぎさんが いきをきらせながら なきます。

「あっ ふああぁっ!

 すごいよぉ ああっ ひゃんっ!

 あうぅうっ ひつじさぁんっ!

 もっと もっと ぼくの おくまで きてぇえっ!」

しろい うさぎさんも なきます。

「んぁああっ からだの おくが あついよぉっ」

ひつじさんが こんどは ゆびを うごかすと

しろい うさぎさんが せつないこえで なきます。

「んっ ひゃううっ!

 やぁっ そこ そんなに いじめちゃ ああっ!

 やあぁあっ だめぇっ いっちゃうよぉっ!

 あっ まって まだぁっ ひあぁああっ!」

くろい うさぎさんも なきます。

「だめぇっ きもちよすぎて おかしくなっちゃうぅっ!」

すっかり たべられてしまった うさぎさんたちは

ぐったりと ベッドに たおれこみました。

ひつじさんは うさぎさんたちを やさしく なでてあげます。

「ねえ ひつじさん」

「なあに?」

「ひつじさんは ほんとうに ひつじさんなの?」

ひつじさんは こまってしまいました。

なぜなら ひつじさんは ほんとうは オオカミだからです。

「おれは ひつじだよ」

「ほんとうに?」

ひつじさんに とって かわいい うさぎさんたちに

うそを つくことは とても つらいことでした。

でも オオカミだと ばれてしまったら

いえから おいだされて しまうかもしれません。

ひつじさんは なくなく うそを つきました。

「ほんとうだよ」

うさぎさんたちは ひつじさんの ことばを しんじました。

こうして しろと くろの うさぎさんと

ひつじさんの ふりをした オオカミは

いっしょの いえで くらすことになりました。

うさぎさんは きょうも ひつじさんを さそいます。

「ねえ ひつじさん いっしょに ねようよ」

「だめー きょうは ぼくが かわいがってもらうのー!」

「はいはい ケンカしないの」

オオカミは じぶんの しょうたいが ばれないように

いっしょうけんめいに かくそうとします。

でも うさぎさんは オオカミの しょうたいに きづいていました。

ほんものの ひつじさんは うさぎさんを たべたりしません。

うさぎさんを たべてしまう ひつじさんは にせものなのです。

それでも うさぎさんたちは 

オオカミの しょうたいを だまっていることに しました。

ずっと オオカミと いっしょに いたかったからです。

こうして しろと くろの うさぎさんと

ひつじさんの ふりをした オオカミは

いつまでも なかよく くらしましたとさ。

めでたし めでたし。